漢方と私
「漢方薬なんて高いしまずいし、すぐには効きかない!!」
薬学生だった私はずっとそんな風に思っていました。
もちろん頭が痛ければ即鎮痛剤、食べすぎたら消化剤、 湿疹ができればステロイド軟膏を使い、生理前はイライラするもの!と決め込んでいた気がします。
結婚して主人の転勤で小田原にきて間もなく、子育てから逃げたい一心で勤務先を探し見つけたのが漢方相談薬局。
その先20年も勤めさせていただく事になるとは………
これも運命だったのでしょう。
子育て(3歳と1歳)の傍ら日々触れている漢方薬に興味を持ち、お友だちの援助(二次保育みたいな)を得て勉強会に通い始めました。
・痛みに
ある時、持病の膝関節炎で階段を昇り降りするのが痛い!痛い!痛い!
いつもなら即、鎮痛剤に行くところ、学んだばかりの漢方ニ種類を服用したところ、翌朝「え~嘘みたい、昨夜まであんなに痛かったのに!!」
それからです。自分はもちろん家族の体調不良にも手当たり次第、漢方薬などを服用させ、その手応えを体で感じて行きました(ジェンナーみたい)
当初渋っていた家族も、苦痛から解放される事がわかると信用し始め何かあるとすぐに症状を訴えてくるようになったのです。
息子の繰り返す中耳炎や、娘の膀胱炎、皮膚炎や鼻炎といったアレルギー体質などいろいろな場面で良い反応を知り、その都度はまっていった気がします。
・受験…
小学6年の冬、突然言い出した息子の中高一貫校受験
短期間で成果を出さざるを得ず、集中力を増すエゾウコギ製剤を飲ませました。(多動児?と担任から警告を受けていた様な子が、驚くべき集中力でわずか二か月ほどで受験に合格したのもビックリでした。
同じ様に六年生になってから受験を希望した娘には、脳につながる腎の力を補う六味丸を飲ませました。(つまり補腎)
いつも赤い顔をして暑い暑いと冷たいものを欲しがっていたのが、ずいぶん落ち着いたのも良かったです。
子供達がそれぞれの結果を出す事ができて良かったのですが、喜んでいる姿を見て私は心の中で「頭の回転良くするのにも漢方薬って役立つんだ!!」と手応えを感じたものです。
その後も試験が近づくと「お母さん何かない?」と擦り寄ってきた子供達。「ようは、努力と実力よ」と言いつつ体調に合わせて漢方薬を差し出してきた母です。
(こんな具合で娘は昨年東大に合格!!でも「実力だね!」ってことにしてあります)
・息子のニキビと親子の対立
思春期に入ると「バカ!うるさい!クソ婆」を繰り返す息子にイライラが募り喧嘩が耐えない日が続きました。
お互い似たような性格だったからかもしれません。
私は、日々のイライラ対策に、教科書どおり加味逍遥散を服用。
試しに息子にも飲ませようと「ニキビに良い漢方薬あるけど飲む?」と聞いてみると、ここは素直に服用。
飲み始めて3日経った時「あれ?今日クソ婆っていってないよね?」と私。
「そういえば僕全然イライラしてない。顔のブツブツも無くなったし」と笑顔の息子。
親子のバトルが収束に向かった瞬間でした。
漢方薬には「母子同服」という言葉があります。
お子様の症状を治したい時は、母と子供で同じ処方を飲むと良い結果が出やすいのです。
特に夜尿症や自家中毒(腹痛を繰り返すなど)と言われる症状によく使われています。
・白血病の父
3年前貧血症状が進み詳しく検査したところ、骨髄異形成から白血病に進んでいるといわれ、主治医から抗がん剤を勧められました。
私としては80歳をすぎている父に抗がん剤は使いたくないとお断りし、定期的な輸血と私が送る漢方薬の服用で様子を見たいと主治医に伝えました。
その後何事もなく、今年で告知後三年が経ちました。
慢性の腰痛と年相応の物忘れこそあれ、いつも前向きで元気な父はまだまだ長生きしてくれそうです!!
(死を覚悟して配ったお金でもうしばらく高価なお薬送ってあげられそうです)
そんなこんなで、漢方エピソードは尽きませんが、私にとってはなくてはならない存在となった漢方薬です。
生薬相場の価格高騰が気になりますが、なんとか飲み続けられることを祈っております。